AIペンギンミステリー(10) 第3話③

AIペンギン

《初めてのアンドロイド》(解答編)

🐧「手のぬくもり」 

子どものころから憧れていたアンドロイドと話ができてリュウは興奮気味だった。

「あの…、女の子にこんなことをお願いするのはダメなことかもしれないけど…。触れてみてもいいですか? 腕とか…。もちろん嫌なら断ってくれてもいいですっ」

普段のリュウならこんなことは言わなかったに違いない。それでも、憧れと好奇心がないまぜになってリュウは言わずにはいられなかった。

アンドロイドには表情がないから、どう感じたのかはわからない。ただ、答えるまでに少し間があった。

「でしたら、握手しましょうか? あなたがそう望むなら」

「ありがとう! うれしいな」

 リュウがそう言うと、アンドロイドは右手を差し出した。リュウも右手を出してしっかり握手する。金属の堅い質感、ひんやりしたすべすべした指。言葉も動きもなめらかなのに、触れてみると人間とは違う《機械》を感じた。

「ありがとう。ほんとにうれしい」

 リュウはアンドロイドにお礼を言った。

「どういたしまして。喜んでいただけたなら幸いです。では、ドリンクを選びますか?」

「いや、その前にさっきの『赤青計算』の答えを確認したいです」

 リュウはそう申し出た。

「3問とも正解していますよ。それでも、わざわざ答えを聞きたいのですか?」

「ええ、できれば。どうしてこんな問題を出したのかな? と思ったし」

「わかりました。では…、これが答えです」

 アンドロイドは再び、タブレットを操作してリュウに画面を見せてくれた。

【解答編】

アンドロイド「この『赤青計算』は必要な情報を瞬時に見分け、答えを導く力を確かめるための問題です」

リュウ「問題1では例題の数式が同じなのに答えが違ってる」

アンドロイド「その通りです。最初の例題は赤い数字だけを計算すれば「1+4」で赤い数字の答え=5になります。2つ目の例題では青い数字だけを計算すれば「5-2」となり、答え=3です」

リュウ「ポイントは『=』が何色になっているか? ですよね」

アンドロイド「そうです。問題の『=』は青色ですから、「3+4-2」となり、答えは『5』になります」


アンドロイド「問題2は『318』という3ケタの数字に惑わされないこと。掛け算を先に処理することがポイントでした。『=』は赤色ですから、「6×2」を先に計算して、18から12を引き算します。答えは『6』になります」


リュウ「この問題は『=』と答えが紫色になっていた」

アンドロイド「その通りです。紫は赤と青を混ぜた色。そこで例題を確認すると、赤と青両方の数式をそのまま計算すればよいことがわかります。したがって答えは『23』になります」

リュウ「ありがとう。よくわかったよ」

 アンドロイドはリュウをじっと見た。

アンドロイド「こちらからも質問があります。握手をする前にあなたは私のことを『女の子』と判断したように推察されます。それはなぜですか?」

リュウ「え、違ってたのかな? 気を悪くしたならごめんなさい」

アンドロイド「いえ。気分を害したわけではありません。根拠を知りたかっただけです」

リュウ「なんとなくそう思っただけなんだけど。すそがスカートっぽかったし」

アンドロイド「…それだけですか。人間の『なんとなく』は私たちにとって難解です」

 リュウは改めてアンドロイドを『じっと』見た。

 銀色と濃いグレーが混ざったような金属のボディ。サイドには濃紺の細いラインが入っている。肩幅が広くてウエストの下は少しだけ広がった形でタイトスカートに見えなくもない。全体的な印象は美術室にあった関節が動く木のデッサン人形に似ていた。

アンドロイド「あなたの手は温かかったです。36.6度でした。体を構成している物、思考の巡らせ方…アンドロイドと人間は違うことばかりです」

リュウ「オレの感想は違います。初めてアンドロイドと接してみて『こんなに人間に近いんだー』って思った」

 リュウとアンドロイドはお互いを『じっと』見た。

《 To be continued… 》

次回は、

(11)【第4話「小さな落し物」〈問題編〉】

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🐧 今回はここまで。

楽しんでいただけたでしょうか?

人間とアンドロイド…

「違い」も「共通点」もいろいろありそうです。

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