《 一歩先を行く妹 》 (ヒント編)
「クロスにヒミツ」
「テンテロテンテロリーン」
そういえば、最初にあの「テンテロ」の音を聞いたのは朝、起きた時だった。リュウはその時の問題のことを思い出す。
【ヒント編】
リュウ(どっかの店先でこの単語が並んでるのを見た覚えがある。たしか、なんかの食べ物だったような…)
リュウ(こっちも食べ物に関係してる気がする。
朝一番に送られてきた問題は「食事」に結びついているのかもしれないな)
今、解いている「問題3」は朝の問題とはちょっと違う。入る言葉を探してから文字を並べ替えるようだ。
リュウ(「にんげん」の下に→があるなぁ。これってなにを表してるんだろ。時間かな? ああ、そうかこれって )
人間って不思議な生き物だと思う。時とともに、「生き方」や「役割」が変わるのだから。
ふっと、小さい頃のリホの姿が頭に浮かんだ。
(リホはしっかりしてるよなぁ。それはいいことなんだろうけど、あんなことがなければ違う生き方をしていたかもしれない)
事故で両親が亡くなった後、リュウとリホは叔父夫婦に引き取られることになった。
叔父夫婦には子どもがなくて、小さい頃から兄妹のことをそりゃあもうかわいがってくれた。二人とも東京で暮らしていたのに、「子どもたちの環境をできるだけ変えたくない」と、リュウたちの住む神奈川の半島の端っこの町に自分たちが引っ越してきた。
子どもたちのことを一番に考える。その姿勢は変わらなかったし、ずっと惜しみない愛情を注いでくれている。実の親でなくても本当の家族だ。
それでも、言葉ではうまく表すことのできない「なにか」が胸の奥にある。それは、寂しさだとか、残された者の責任だとか、もう家族を失いたくないという気持ちだとか、そういうものがギュッと固まった「なにか」だ。
リュウが高校に入学するタイミングで、叔父夫婦に海外の研究機関からオファーがあった。話を受ければ数年は日本に帰って来られない。家族会議を開いて納得した上で叔父夫婦は海を渡った。
リホはいつも家族の幸せに気を配っている。あの日以来、リホにわがままを言われた記憶がリュウにはない。
兄妹二人で暮らすようになってから、リホは食事をはじめとする家事を担ってくれている。誰かに頼むことも考えたのだが、それにはリホ自身が猛反対した。
「これが私の幸せなんだから!」と。
(よくいろんなことに気がつくしなぁ~)
「一日体験入学」の時、優秀な生徒たちと話をしたリュウは、少し気後れしていた。
「なんの取柄もないオレなんかが、あっさり入学していいのかな?」
ポツリとリュウがつぶやくと、リホはこう言ったのだ。
「お兄ちゃんは“求められて”《AI学園》に行くんだから、そんな遠慮はいらないの」
わけがわからないリュウにリホは笑顔を向けた。
「クロスワードの答えよ。もう一度、よく見て」
「答えは『アーユーレディー』だよな。確かに『準備はできてる?』ってことだろうけど」
「ううん。そっちじゃなくてね。虹の方」
「え、ニジ?」
「色の着いたマスが7つあるでしょ。それを虹の七色の順に並べると、《シルコヲエラベ》になるでしょう?」
「あ、ほんとだ。色はデザインだと思ってた」
「わざわざお兄ちゃんだけが1人残されてこの問題が出たんでしょ? その“しるこ”が正解だったんだから、問題を出した人はお兄ちゃんに《AI学園》に来てほしかったのよ」
(そうなのかなぁ~? そういえば、謎解きで悩んでた時に、アンドロイドが歌ってくれたことがヒントになったし)
ことの真偽はともかく、リュウは今、こうして《AI学園》の教室にいる。
ぼんやりとそんなことを考えていたら、教室のスクリーンにロボQが現れた。
ロボQ「全員の解答を受け付けまシタ。それではこれから『トッピング券』の説明をシマス」
《 To be continued… 》
次回は、
解答編「楽しいトッピング」
です
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🐧 今回はここまで。
楽しんでいただけたでしょうか?
リュウと家族のエピソードがまた一つ増えました。
それにしても妹のリホちゃんの洞察は鋭いですね。
第2話で出たクロスワードの「もう一つの答え」が
ようやくここで明かされました。
皆さんはお気づきでしたか?
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