《リュウの家族》 (解答編)
🐧「兄妹の約束」
「さっぶ~」
ふとんから出ると、リュウは体を震わせた。
「お兄ちゃん、おはよう。うっすら雪が積もってるよ」
リビングに入るとリホが声をかけてくる。
「どうりで寒いはずだ」
窓から外を見たリュウの頭に、ふっと昨日の赤ちゃんの靴が浮かんだ。
(雪の中で寒いだろうな)
なんだか妙に気になった。
「ちょっと散歩に行ってくる」
「私も行くよ。買い物もしたいし」
朝食の後、リュウとリホは一緒に家を出た。
「お兄ちゃん、《AI学園》に行ってみようよ」
「あー、うん」
《AI学園》は少子化で統合された小学校の跡地に建設された。リュウたちが通っていた小学校で家から歩いて15分ほどだ。
「まさか、こんなところに《AI学園》ができるなんてな」
「これもなにかの《ご縁》かもしれないね」
門の前まで行ってみたが自動販売機はなくなっている。リュウはあたりを見回した。
「お兄ちゃん、何を探してるの?」
「昨日、このへんに赤ちゃんの靴が落ちてたんだ。黄色い靴でペンギンの顔が描いてあった」
ガードレールにも地面にもペンギンの靴は見当たらなかった。
「落としたことに気づいた持ち主が探しにきたのかな?」
「きっとそうだよ。そうだといいね」
振り返ったリホの顔に、一瞬、幼い頃の顔が重なった。
「オレが言うのも変だけど、いい子に育ったよな」
「なに? 突然」
「父さんと母さんが亡くなった時、リホはまだ小さかったからさ。ちゃんと大きくなって良かったなって」
「お兄ちゃんのおかげだって言ってほしいんでしょ」
リホは明るく笑った。
「そんなわけないだろ。それにまだこんなに小さいしな。150㎝あるのか?」
リュウはリホの頭をそっと小突いた。
「たぶんこれ以上、背は伸びないよ。小さくて悪かったわね」
(頭もいいし、しっかりしてるし、なにより優しいし。ほんと立派に育ったよなぁ)
リュウは晴れた冬の青い空を見上げた。
(父さん、母さん、ありがとう。オレたちを見守ってくれて)
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リュウが小学校5年生の時、夜中に突然電話が鳴った。
祖父が危篤だという知らせだった。
翌朝早くに、両親はリュウだけを起こして訳を話し、家を出た。
そして事故に遭って亡くなってしまった。
リホはまだ小学校2年生だった。
リホのショックは大きくて、リュウが出かけようとすると、震えが止まらなくなって泣いた。
「リホが『いってらっしゃい』って言ってくれたら、オレは必ず『ただいま』って帰ってくる。だから、大丈夫だ」
リュウはリホにそう約束した。
それから毎日、リュウはリホと手をつないで登校した。帰りはリュウの方が遅いから、必ず「ただいま」とリホに言うようになった。
大きくなったリホは「しっかり者」になった。もう大丈夫だ。だけど時々、小さなリホが頭に浮かんでくる。
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「昔はよく手をつないでくれたよね。今日は手をつないで帰ろうか?」
ふふふっと笑いながらリホが言う。
「なにばかなこと言ってんだ。ほら、行くぞ。買い物するんだろ」
二人は商店街に向かって歩き出す。
青い空の下、少しだけ積もった雪がキラキラ光りながら解け始めていた。
「お兄ちゃん、おかえりなさい」
家に戻るとリホが言った。
「うん。ただいま」
一緒に帰ってきた時でも、リュウは必ず「ただいま」と言う。あの約束は今も続いている。
ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン!!
ひと息つく暇もなく、大沢が現れた。
【解答編】
大沢「リュウ、答え合わせしようぜ!」
リュウ「オレたち、今、帰ってきたとこなんだぞ」
大沢「そうか。どの問題からにする?」
リュウ「・・・」
大沢「わかりそうでわかんない問題ばっかだよな」
リュウ「そうかぁ?」
リホ「問題2なら簡単じゃない?」
大沢「文字数が合わないんだよ、リホちゃん」
リュウ「はあ?」
大沢「問題2の解答欄から考えると、答えは4文字なんだろ? でも、反転してる文字をつなぐと『クスダ』だろう」
リュウ「ああ、もう面倒だ。鏡に映してこいよ」
スマホ片手に洗面所に向かった大沢は「うおおー」と叫んで戻ってきた。
大沢「答えは『クスダマ』だ! この赤い逆さの『マ』は横になった『ム』だと思ってたぜ」
リホ「次に簡単なのは問題3かな」
大沢「これは文字が足りないんだよ。答えは『ランドセル』だと思うんだけど、『ン』が枠の中にないだろ?」
リュウ「あるよ。ほらここ」
リュウは枠に沿って並んでいる紺色の小さい文字を指さした。
大沢「ヒント123…。これ、ただの模様じゃないのかよ。たしかにヒントの『ン』がある」
リホ「これで答えは『ランドセル』でOKだね」
大沢「でもよ、問題1がさっぱりわからん。『ふりそそぐ』なら水だろ。滝とかさ」
リュウ「水じゃなくて光なんだよ。今日みたいな晴れた気持ちのいい日にはさ…」
大沢「ひょっとしてお日さま?」
リホ「惜しいっ、あと一歩。英語にすると?」
大沢「太陽はサン。『太陽がサンサンとふりそそぐ』か! 答えを入力すると…」
大沢「おお! タテのピンクの枠が『サクラ』になったぞ。よし、さっそく送ろう!」
リュウ「ちょっと待て。たぶん、それじゃ足りないぞ」
大沢「足りない? なにが?」
リホ「黒いワクの小さい紺色の文字を読んでみて」
大沢「さっきの模様みたいなやつだな。ヒント12312。へ? これがなに?」
リュウ「文字を読む順番なんじゃないか? 桜色の枠の中…」
大沢「サ・ク・ラ・サ・ク。あ、言葉になってる。そうか、ヒントってそういうことか! 二人ともすごいな。やっぱ、一緒に解いてよかったぜ~」
大沢は《AI学園》に答えを送信した。
大沢「でもよ、なんでわざわざ追加問題を送ってきたんだろうな?」
《 To be continued… 》
次回は、
(18)【第6話】サクラサク!?
「合格発表の日」 です。
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🐧 今回はここまで。
楽しんでいただけたでしょうか?
問題は解けましたか?
三人寄れば文殊の知恵。
3人で解けば楽勝…
あれ? 大沢君、貢献したっけ?
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