《 一歩先を行く妹 》 (問題編)
「背中を押されて」
《AI学園》の入学説明会から家に戻ったリュウは、玄関に置いてある靴に驚いた。
「おかえりなさい。お兄ちゃん」
いつものようにリホが出迎えてくれた。その後ろから現れたのは…
「ばあちゃん! じいちゃんも!」
「おー、リュウ。《AI学園》とかいうガッコに合格したんだと? えらいなぁ」
「さすが自慢の孫だわ」
「いや、まだ入学するって決まったわけじゃ…」
「ほれほれ、はよ、はよ」
「いや、待ってよ。ばあちゃん」
リビングに入ると、そこはパーティー会場と化していた。朝、出かけた時にはいつも通りだったのに…。
カラフルな文字で「合格&入学おめでとう!」と書かれた紙が壁に貼ってある。パアーン! とクラッカーの音がした。部屋で鳴らしたんじゃない。音がしたのはパソコンの画面からだ。
「リュウ~。合格おめでとう!」
画面で手を振っているのは叔父さん夫婦だ。
「どうなってるんだ? オレは合格はしたけど、まだ入学するなんて、ひと言も…」
リュウがそう言いかけると、じいちゃんがリュウの両肩に手を置いた。
「わしが死にかけたばっかりに、リュウとリホにはほんにつらい思いをさせた。その孫が一緒に暮らす機会をくれるとは、なんとありがたい」
「へっ? 一緒に暮らす?」
「リホのことは、ばあちゃんとじいちゃんに任せておけ」
横でばあちゃんがそう言いながら「うんうん」とうなずいている。
リュウはリホを問い詰めた。
「リホ、合格発表は昨日だったのになんでこんなことになってるんだ?」
「お兄ちゃん、合格発表は昨日じゃないよ。1週間前にわかってたじゃない」
「えっ?」
「《AI学園》からの追加問題の答えは『サクラサク』。その答えを送った時点で合格は決まってたのよ」
「まじかっ!?」
「だからすぐに、おじさんとおばさんに相談して、おじいちゃんとおばあちゃんに来てもらったの。もう引越しの荷物も届いてるよ」
「なんだってーっ!」
「それにたった1年だよ? 来年になれば私も中学校を卒業するし」
「高校生になればいいってもんじゃないだろ」
「いいよ。だって、来年になればまたお兄ちゃんと一緒だもん」
「はあ?」
「だって、私も《AI学園》に入学するんだもん。そうなったら、一緒に暮らしてるのと変わらないよ」
「えーーっ?」
「私には無理だと思ってるの?」
「…いや、リホなら受かるだろ。たぶん」
「じゃ、決まりだね。《AI学園》入学おめでとう! おにいちゃん!」
「ちょっとまて、オレが今までどんな気持ちで…」
リホは窓辺に駆け寄って手招きした。植え込みの陰からピョコンと顔を出したのは大沢だ。
「大沢もグルなのかーっ」
リホの焼いた特大ケーキを食べながら、リビングではにぎやかな会話が弾んでいる。
「昨日の合格発表の後、俺、リホちゃんに言ったんだ。『リュウはリホちゃんを一人にできないって言うに違いないから、リホちゃんはうちで暮らせばいい』って」
「大沢の家で? そんなことオレが許さない」
「そしたら、リホちゃんが『もう手は打ってあるから大丈夫』だって。リホちゃんのすることに間違いはないからな。だから、俺は余計なことを言わないようにしてたんだ」
(知らなかったのはオレだけってことか…。でも、全員がオレのためにいろいろしてくれてたんだな)
すんなり納得していいのか? と思う部分もあるものの、「ありがたいな」とリュウは素直に思った。
「リホちゃんは俺たちより年下だけど、一歩先を予測して実行に移しちゃうんだからスゴイよな」
(リホは賢いから、オレの考えることなんて《お見通し》なんだろうな。たしかにいつも一歩先を見てる)
リホのことはじいちゃんとばあちゃんがいれば、たぶん心配ないだろう。リホの計画通りなら、来年にはリホも《AI学園》の寮に入ることになるし。
こうして、リュウは晴れて《AI学園》に入学することになった。
《AI学園》での生活が始まった。
割り当てられた寮の個室には、体験入学の時に見た「スタンダードタイプ」の家具が揃っていた。それにプラスして「あったらいいなと思う物」にリュウが書いておいたデスクトップ型のパソコンが設置されている。
(これで、リホの顔を見ながら連絡を取り合えるな)
その翌朝。
「テンテロテンテロリーン
朝です。朝です。朝です」
支給されたスマホのなんだか独特な音声でリュウは目を覚ました。
音声を止めると、画面には「謎解き問題」が現れた。
(やっぱりな。これから毎日、こんな感じなんだろうな)
【問題編】
リュウは寝起きの頭をなんとか回転させて問題を解いた。
その日の午前中は学内や授業の説明があった。その途中の11時頃。
「テンテロテンテロリーン」
学生たちのスマホが一斉に鳴りだした。
音を止めると、また「謎解き問題」が現れた。
どうやらあの「テンテロテンテロリーン」の後には「謎解き問題」が出るらしい。
《それが授業中であってもすぐに「謎解き」するように》と、すかさず説明があった。
生徒たちは一斉に謎を解き始める。
《 To be continued… 》
次回は、
ヒント編「クロスにヒミツ」
です
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🐧 今回はここまで。
楽しんでいただけたでしょうか?
妹のリホちゃんと周囲の協力で、《AI学園》に
入学することができたリュウ。
これからことあるごとに「謎解き」を
することになりそう。
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