《 部屋と制服と食事 》 (ヒント編)
「特別メニューはカリカリジューシー」
大食堂の照明が暗くなり、音楽が流れだす。
ステージの奥のモニターにロボQが現れた。
「それでは、ここで《AI学園》の制服をお披露目しまショウ」
エレキギターのイントロが流れ、音楽は急に激しくなった。
ステージのスポットライトが照らし出したのは…
まず、女子用の制服を着た美少女。
そして、男子用の制服を着た……美少女!?
大食堂にはどよめきが起こった。
激しい音楽にクラップ音が加わり、その拍に合わせて、モデルの美少女二人は次々にポーズを決める。
二人の少女の背丈は同じ。一人はツインテールで、もう一人は毛先を斜めにカットしたおかっぱだ。
キレのある美しい動きに観客は魅了されている。クラップ音に合わせて手拍子も起きている。
「白雪ちゃ~ん」
「かわいいよー!」
なんか声援も飛んでいる。
(ああ、そうか。あの髪の長い方って前に会った『天原』なんだな。それにしても、なんでこんな…)
「君はあんまり興味がなさそうだね」
隣に座っていた学生に不意に話しかけられてリュウは驚いた。
「制服はさっき見たし。こんなド派手なショーにしなくたっていいと思うけどね」
「ふ~ん。あのこは…」
その時、音楽が止まったので会話は途切れた。
「それではご紹介しまショウ。女子用の制服のモデルになってくれたのは特待生の天原白雪さんデス。そして、男子用の制服のモデルは天原さんの要望を取り入れた最新鋭のアンドロイドです」
「えっ、アンドロイド!?」
リュウはイスから飛び上がりそうになった。
会場にも大きなどよめきが起こった。どう見ても人間だ。金属に見える部分はどこにもなかった。
「みんな~、一緒に学園生活を楽しもうね! 彼女はプラム。とびっきりのアンドロイドよ」
マイクを渡された白雪は笑顔を振りまいた。まるで、アイドルだ。あちこちから黄色い声援が飛ぶ。思った以上に彼女は有名人らしい。そんなことはどうでもいいとばかりにリュウが釘付けになっているのはアンドロイドの方だった。
「そして、もう一人の特待生は結城勇樹さんデス。本人の希望によりステージには上がりマセン。そして、彼の要望に合わせて作られたAIロボットがこちらデス」
スポットライトの先には…
「うおお!」リュウは思わず声を上げた。
美少女に興味を示さず、ロボットに雄叫びを上げるリュウに周囲は驚いたようだったが、同類はほかにもいたようで違う場所からも声が上がっていた。
興奮冷めやらぬ中、お待ちかねのランチタイムになった。リュウの前にトレイに乗ったカレーとミニサラダが置かれた。ちゃんと、彩り豊かな温野菜もトッピングされている。
(サラダがつくなら温野菜よりミニカツの方がよかったかなぁ)
【ヒント編】
ロボQ「さあ、ミナサン。本日の《特別メニュー》の紹介です。権利を獲得したのは天原白雪さん、結城勇樹さん、そして、吉水リュウさんデス!」
ワーっと歓声が上がり、運ばれてきたのは「特大エビフライ」だった。ゆうに20㎝は越えている。
大沢「リュウー、リュウ~!」
リュウの居場所がわかったからだろう。大沢が立ち上がって手を振っているのが見えた。
リュウ(やめてくれ~~、恥ずかしい)
リュウの前に運ばれた「特別メニュー」に視線が集まる。
リュウ「なんでオレなんだよ…」
ロボQ「朝、最初に出題した謎解き問題に圧倒的な早さで解答した3名が権利を得まシタ」
一斉に拍手が起こる。
天原白雪が立ち上がって手を振ると、歓声が沸き起こった。
ロボQ「さあ、遠慮なく召し上がってくだサイ」
リュウ(こんなジロジロ見られているのに落ち着いて食えるかーっ)
そう叫びたい気分だった。リュウは半ばやけになって、でっかいエビフライの頭にかぶりついた。
カリッ。カリリリ。
「おおーっ」と、周囲の学生たちは興味津々だ。
リュウ(なにかほかのことを考えよう…)
現実逃避モードに入ったリュウは、施設見学の前に出された問題を思い出した。
リュウ(だいたい、なんで問題を出した時に答えさせなかったんだろう? それってなにか意味があるってことじゃないのか?)
問題1:制服の間違いをできるだけ具体的に5つ答えよ
リュウ(「問題1」の間違い探しはそんなに難しい問題じゃなかった気がする。でも、なんかひっかかるんだよな)
リュウ(「問題2」のあるなし問題は、「ある」の方に「デスク」とか「ベッド」が入ってるから答えは家具ってことなのか? でも、家具じゃない物もあるしなぁ)
「どう? おいしい?」
さっき、リュウに話しかけてきた男子生徒が聞いてきた。
リュウ「こんな状況じゃなきゃ、最高にうまいと思う」
リュウは正直な感想を言った。頭はカリカリに揚がっているのに、身の部分はジューシーで噛むほどに旨味が広がっていく。
リュウ(トッピングを温野菜にしといてよかったな。カツにしてたら胃もたれしそうだ)
山田「僕は山田だよ。結城は同じ高校のクラスメートだった。頭はいいけど、無口で偏屈なヤツでさ。さっきもステージに上がらなかっただろ」
リュウと山田が話し始めたからか、カレーが案外おいしかったせいか、テーブルを囲んで会話が弾んだ。
山田「君はどこの高校? ふーん、ごめんよく知らないな。ああ、地元の高校なんだ」
どうやらリュウ以外は誰でも名前を知っている進学校の出身らしかった。
優香「カレーおいしいよね。こんなおいしいご飯が出るなら食事には期待していいかも~」
山本優香という女子学生はうれしそうにしている。話し始めると止まらないタイプのようだった。
優香「結構緊張してたんだよねー。見学の間、誰もしゃべらないしさ~。この先、どうしようって思っちゃった」
ロボQ「さて、お食事中ですが「謎解き」のことも忘れてもらっては困りマス。ここで一つ追加事項がありますからよく聞いてくだサイ。『問題2』のあるなし問題ですが、『ある』にあったらいいなと思う物を1つ、考えておいてくだサイ」
優香「どういうこと?」
山田「『あったらいいな』ってそんな問題あるか?」
生徒たちはざわざわし始めた。
リュウ「それもヒントってことなんじゃないかな?」
テーブルの生徒たちは一斉にリュウを見た。
リュウ「あ、いや、たいしたことじゃ…。ちょっと思っただけだし」
食事が終わると、後片付けはセルフサービスだった。食器ののったトレイを返却口まで持っていくよう指示された。
リュウは様子を見ながら立ち上がり、大沢がトレイを戻すタイミングで近づいた。声をかけようとする大沢を制して…
リュウ「『あるといい物』は『テレビ』だ」
小声でそう言ってそばを離れた。大沢はきょとんとしている。
リュウ(わかってくれるといいんだけどな…)
《 To be continued… 》
次回は、
です
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🐧 今回はここまで。
楽しんでいただけたでしょうか?
ド派手なパフォーマンスで紹介された
特待生とアンドロイド&ロボット。
そして、特別メニュー。
普通ではない学園生活の予感がします。
でも、その前に…。
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