AIペンギンミステリー(17)  第5話③

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《リュウの家族》 (解答編)

🐧「兄妹の約束」

「さっぶ~」

 ふとんから出ると、リュウは体を震わせた。

「お兄ちゃん、おはよう。うっすら雪が積もってるよ」

 リビングに入るとリホが声をかけてくる。

「どうりで寒いはずだ」

 窓から外を見たリュウの頭に、ふっと昨日の赤ちゃんの靴が浮かんだ。

(雪の中で寒いだろうな)

 なんだか妙に気になった。

「ちょっと散歩に行ってくる」

「私も行くよ。買い物もしたいし」

朝食の後、リュウとリホは一緒に家を出た。

「お兄ちゃん、《AI学園》に行ってみようよ」

「あー、うん」

《AI学園》は少子化で統合された小学校の跡地に建設された。リュウたちが通っていた小学校で家から歩いて15分ほどだ。

「まさか、こんなところに《AI学園》ができるなんてな」

「これもなにかの《ご縁》かもしれないね」

 門の前まで行ってみたが自動販売機はなくなっている。リュウはあたりを見回した。

「お兄ちゃん、何を探してるの?」

「昨日、このへんに赤ちゃんの靴が落ちてたんだ。黄色い靴でペンギンの顔が描いてあった」

 ガードレールにも地面にもペンギンの靴は見当たらなかった。

「落としたことに気づいた持ち主が探しにきたのかな?」

「きっとそうだよ。そうだといいね」

 振り返ったリホの顔に、一瞬、幼い頃の顔が重なった。

「オレが言うのも変だけど、いい子に育ったよな」

「なに? 突然」

「父さんと母さんが亡くなった時、リホはまだ小さかったからさ。ちゃんと大きくなって良かったなって」

「お兄ちゃんのおかげだって言ってほしいんでしょ」

 リホは明るく笑った。

「そんなわけないだろ。それにまだこんなに小さいしな。150㎝あるのか?」

 リュウはリホの頭をそっと小突いた。

「たぶんこれ以上、背は伸びないよ。小さくて悪かったわね」

(頭もいいし、しっかりしてるし、なにより優しいし。ほんと立派に育ったよなぁ)

 リュウは晴れた冬の青い空を見上げた。

(父さん、母さん、ありがとう。オレたちを見守ってくれて)

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 リュウが小学校5年生の時、夜中に突然電話が鳴った。

祖父が危篤だという知らせだった。

 翌朝早くに、両親はリュウだけを起こして訳を話し、家を出た。

そして事故に遭って亡くなってしまった。

 リホはまだ小学校2年生だった。

 リホのショックは大きくて、リュウが出かけようとすると、震えが止まらなくなって泣いた。

「リホが『いってらっしゃい』って言ってくれたら、オレは必ず『ただいま』って帰ってくる。だから、大丈夫だ」

 リュウはリホにそう約束した。

 それから毎日、リュウはリホと手をつないで登校した。帰りはリュウの方が遅いから、必ず「ただいま」とリホに言うようになった。

 大きくなったリホは「しっかり者」になった。もう大丈夫だ。だけど時々、小さなリホが頭に浮かんでくる。

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「昔はよく手をつないでくれたよね。今日は手をつないで帰ろうか?」

 ふふふっと笑いながらリホが言う。

「なにばかなこと言ってんだ。ほら、行くぞ。買い物するんだろ」

 二人は商店街に向かって歩き出す。

 青い空の下、少しだけ積もった雪がキラキラ光りながら解け始めていた。


「お兄ちゃん、おかえりなさい」

 家に戻るとリホが言った。

「うん。ただいま」

 一緒に帰ってきた時でも、リュウは必ず「ただいま」と言う。あの約束は今も続いている。


ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン!!

ひと息つく暇もなく、大沢が現れた。

【解答編】

大沢「リュウ、答え合わせしようぜ!」

リュウ「オレたち、今、帰ってきたとこなんだぞ」

大沢「そうか。どの問題からにする?」

リュウ「・・・」




大沢「わかりそうでわかんない問題ばっかだよな」

リュウ「そうかぁ?」

リホ「問題2なら簡単じゃない?」

大沢「文字数が合わないんだよ、リホちゃん」

リュウ「はあ?」

大沢「問題2の解答欄から考えると、答えは4文字なんだろ? でも、反転してる文字をつなぐと『クスダ』だろう」

リュウ「ああ、もう面倒だ。鏡に映してこいよ」

 スマホ片手に洗面所に向かった大沢は「うおおー」と叫んで戻ってきた。

大沢「答えは『クスダマ』だ! この赤い逆さの『マ』は横になった『ム』だと思ってたぜ」

リホ「次に簡単なのは問題3かな」

大沢「これは文字が足りないんだよ。答えは『ランドセル』だと思うんだけど、『ン』が枠の中にないだろ?」

リュウ「あるよ。ほらここ」

 リュウは枠に沿って並んでいる紺色の小さい文字を指さした。

大沢「ヒント123…。これ、ただの模様じゃないのかよ。たしかにヒントの『ン』がある」

リホ「これで答えは『ランドセル』でOKだね」

大沢「でもよ、問題1がさっぱりわからん。『ふりそそぐ』なら水だろ。滝とかさ」

リュウ「水じゃなくて光なんだよ。今日みたいな晴れた気持ちのいい日にはさ…」

大沢「ひょっとしてお日さま?」

リホ「惜しいっ、あと一歩。英語にすると?」

大沢「太陽はサン。『太陽がサンサンとふりそそぐ』か! 答えを入力すると…」



大沢「おお! タテのピンクの枠が『サクラ』になったぞ。よし、さっそく送ろう!」

リュウ「ちょっと待て。たぶん、それじゃ足りないぞ」

大沢「足りない? なにが?」

リホ「黒いワクの小さい紺色の文字を読んでみて」

大沢「さっきの模様みたいなやつだな。ヒント12312。へ? これがなに?」

リュウ「文字を読む順番なんじゃないか? 桜色の枠の中…」

大沢「サ・ク・ラ・サ・ク。あ、言葉になってる。そうか、ヒントってそういうことか! 二人ともすごいな。やっぱ、一緒に解いてよかったぜ~」

 大沢は《AI学園》に答えを送信した。

大沢「でもよ、なんでわざわざ追加問題を送ってきたんだろうな?」

《 To be continued… 》

次回は、

(18)【第6話】サクラサク!? 
   「合格発表の日」 です。

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🐧 今回はここまで。

楽しんでいただけたでしょうか?

問題は解けましたか?

三人寄れば文殊の知恵。

3人で解けば楽勝…

あれ? 大沢君、貢献したっけ?

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