AIペンギンミステリー(9) 第3話②

AIペンギン

《初めてのアンドロイド》 (ヒント編)

🐧「じっと見る」

 色付きの計算問題を全問正解したリュウはアンドロイドから3枚のカードを受け取った。

 カードは気になるけれど、リュウがもっと気になっているのはアンドロイドだ。リュウは小さいころからロボットやアンドロイドが大好きだった。

 子ども時代、男の子は「乗り物派」と「ロボット派」と「恐竜派」に分かれていて、リュウはもちろん「ロボット派」だった。

ロボットはおもちゃを買ってもらった。だけど、アンドロイドは本を読んでもよくわからなくて、子どもの想像では理解しきれない憧れの存在だった。そのアンドロイドが今、目の前にいる。

「オレ、ずっとアンドロイドの実物を見てみたくて」

 自動販売機の前にアンドロイドがいるのを発見したときからリュウはずっと話してみたかったのだ。

「あなたは本物のアンドロイドですよね?」

 間抜けな質問だったが、アンドロイドは馬鹿にした素振りはせず「そうですよ」と言った。

「失礼かもしれないけどっ。こんな機会はもうないかもしれないから、じっと見てもいいですか?」

 なんかもう自分でなにを言っているのかよくわからない。憧れというのは突然、実物を目の前にすると人間から冷静さを奪うのかもしれない。

「あなたが私を『じっと見て』も、失礼だと思うことも不快に感じることもありません。ですから、じっと見ても結構ですが、私には私の仕事があります」

 アンドロイドはそう言って、リュウをじっと見た。

「仕事?」

 リュウが聞き返すと、アンドロイドはうなずいた。

「あなたにお伝えすることがまだ残っています。私の仕事はおおまかにいえば《あなたにドリンクを渡すこと》です。《赤青問題》…さきほどの計算問題のことです。これに正解した受験生は自分でドリンクを選ぶ権利があります」

 アンドロイドは片手を自動販売機に向けた。


「この中からお好きなドリンクを1本選んでください。迷ったらお渡しした《3枚のカード》を参考にするといいかもしれません。あなたが最後の受験生ですから、ゆっくり選んでいいですよ。アンドロイドを『じっと見る』前でも後でも」

「あの…。少しだけ質問させてください。アンドロイドと人間の違いってなんですか?」

 リュウは遠慮がちに(でも、じっと)アンドロイドを見ながらそう聞いてみた。

「短時間で説明するのは難しいですが、具体例を1つ挙げれば人間よりも記憶力とその再生にたけていると言えますね。例えば、さきほどの《赤青計算~問題1》なら…

青3プラス赤8マイナス青4赤7プラス9青マイナス2=? です」

「そう言われても、合っているかどうか判断できないし…」

 リュウがそう言うと、アンドロイドはタブレットをピピッと操作して画面をリュウに見せた。

【ヒント編】

 

アンドロイド「【問題1】青3プラス赤8マイナス青4赤7プラス9青マイナス2=? です」

リュウ「はい。合ってます…。たしかに人間じゃ、ここまで正確には覚えられない」

アンドロイド「でも、あなたは問題を解くことはできました」

リュウ「【問題1】の例題が、同じ計算式なのに答えが違うって気がついたから。赤と青の関係がわかれば、計算自体は簡単だったし。【問題3】は答えが紫だったけど、例題を見れば(ああ、そういうことか)ってわかったんで」

アンドロイド「正解できてよかったですね」

リュウ「あの…、女の子にこんなことをお願いするのはダメなことかもしれないけど…」


《 To be continued… 》

次回は、

(10)【〈解答編〉「手のぬくもり」】

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🐧 今回はここまで。

楽しんでいただけたでしょうか?

アンドロイドとの会話。機会があったら、どんなことを話してみたいですか?

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